ProjectStory vol.1 都心近くの大自然。絶好のロケーションを活かした気軽に週末合宿ができる場所。R.projectの合宿ビジネスの原点になった「サンセットブリーズ保田」プロジェクトとは

東京からわずか1時間。青い海と豊かな森林に囲まれた千葉県南房総にある鋸南町(きょなんまち)。
その美しい海辺を歩いていると、海の青にひときわ映える緑の芝生が目に飛び込んでくる。
2007年11月に開業した合宿所「サンセットブリーズ保田」が誇るフットサルコートだ。
「サンセットブリーズ保田」はフットサルコートをはじめスカッシュコートといったスポーツ施設を完備。スポーツ合宿やゼミ合宿から、スポーツ大会、学校単位での教育旅行、企業研修、ビジネスでの長期滞在、そして家族旅行と幅広く利用され、現在では年間23,000泊という、合宿所としては非常に高い成果を維持している。
これは、いま各界から注目を浴びるサンセットブリーズ保田プロジェクトの軌跡である。

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取り壊されるはずだった宿泊施設

サンセットブリーズ保田の前身は、東京都千代田区が42年間にわたって運営してきた旧「千代田区保田臨海学園」。都心で学ぶ子どもたちが、自然とのふれあいや地方での暮らしを体験できる貴重な施設だった。しかし、少子化の影響でやむなく閉鎖。解体を待つばかりとなっていた。その解体手続きが翌週に迫っていたある日、管理者のもとに思いもかけない電話が入る。

「ぜひともこの施設を使わせていただきたい。私の計画を聞いてもらえませんか?」
こう切り出した人物こそ、R.project代表の丹埜だった。

合宿ビジネス成功の確信

かねてから地方地域の遊休施設活用に大きな意義を感じ、その手段として「合宿」に焦点をあてた宿泊ビジネスに発展の可能性を見出していた丹埜は、その理念に合う物件を探しているところだった。
少子化が進む一方で、全世代で学習人気が高まる昨今、スポーツや文化活動を行う「団体」を対象とした合宿市場は実は数千億円規模の市場があると丹埜は考えている。
意外と大きな市場がある一方で、供給は限られている。バブル崩壊以降、社会情勢の変化もあって特に社会人を対象とした団体旅行が減少。多くの宿泊施設が個人客向けにシフトしていった結果、合宿の主な受け入れ先は比較的規模の小さな民宿が中心になった。その多くは家族経営で深刻な後継者不足に直面し、施設の老朽化に対応するための追加投資が行えなかったり、企業経営であれば当然とも言える顧客対応の水準に至っていないのが現実である。
また、なかにはホテルなどの大型施設が合宿客を受け入れているところもあるが、水準以上の対応が望める反面、場の雰囲気が堅くなりがちで、自由闊達なコミュニケーションの場とはなりづらいという難点がある。
開放的な雰囲気、アットホームな接客、そして合宿の目的が果たせる設備、都心からの便利なアクセス。それらすべてを満たす施設は探してもなかなか見つかるものではない。

ところが鋸南町にはそれがあったのだ。
旧「千代田区保田臨海学園」をひと目見た丹埜は確信した。
「鋸南町は、豊かな自然環境と都心からのアクセスも良い絶好のロケーションだ。加えて、すでに団体利用に適した設備もある。ここで顧客の需要に応える組織運営をすれば、間違いなく受け入れられる」と。
その確信は、人々の共感を集めた。
共感したのは顧客たちばかりではない。地域の雇用創出や経済効果の期待感から、町長をはじめ、多くの地元住民たちからの支持を受け、スカッシュコートなど特殊な工事に協力してくれる地元の建設会社とも協力体制を築くことができた。そのスカッシュコート新設計画には、スカッシュ協会公認の推薦も受けた。

そんな数々の協力を受け、生まれ変わった施設に新たに冠された名称は「サンセットブリーズ保田」。
富士山に沈んでいく鋸南町の美しい夕日の優しさ、そして時には厳しさを教えてくれる海風に、この場所で育まれていく人々の絆をなぞらえて。

生まれ変わった施設に、人が押し寄せる!成長と拡大へ

2007年11月。1年間の工事を終え、ついにサンセットブリーズ保田はオープンを迎えた。
リノベーションされた宿泊棟は骨格や大部屋の雰囲気に臨海学園時代の面影を残しつつ、開放的な明るい空間へと変貌を遂げ、さらにスカッシュコートとフットサルコートの新設、シェフ招聘によるキッチン部門の改善、営業強化によって顧客からの要望に応えられる組織運営体制も確立した。
オープニングパーティーは、これまで協力してくれた多くの人たちから祝福と激励と、施設で働きはじめるスタッフの決意に満ちたアットホームな雰囲気のなかで行なわれ、それがサンセットブリーズ保田の前途を表しているかのようだった。
そしてそのオープニングパーティー同様に、丹埜にとって、またR.projectのメンバーたちにとって、1年前はほぼ更地だった場所に数えきれないほどの人が集い、実際に施設を利用している光景が感慨深かった。
「こんな近くに、こんないいところがあったんだ!」
地域外からきた宿泊客たちはみな一様に感嘆する。
それまで合宿の定番といえば、春休みや夏休みといった長期休暇を利用した都内から長野や伊豆などへの遠征。
サンセットブリーズ保田がきっかけで鋸南町の存在とその魅力を知り、週末でも気軽に合宿が組めるようになった。利用客から感嘆の声は決して大げさなものではないだろう。

もちろん無事にオープンに漕ぎ着けたからといって、その後すべてが順風満帆だったわけではない。
合宿事業を組織で運営するのはR.projectにとって初めての試みでもあり、実際、いつ、どのくらいの人が施設を訪れるのか、シーズン毎の繁閑差でさえ予想することができなかった。
想定外の事態が起きることも少なくなかったが、メンバーは一つひとつの課題と向き合い、そして着実に成長していった。
オープンから5年が経過するころには運営も軌道に乗り、繁忙期には満室で予約を断らざるを得ないことも。利用者の負担を減らすために、町内に新施設の増設を決定したのもこのころだ。
この決定を受けて、コテージ型の宿泊施設「サンセットビレッジ」、翌年には企業の保養所を改装した貸切スタイルの「サンセットビーチハウス」が誕生することとなった。

地域密着の運営がさらなる集客を生む

順調な運営を受けて、現場のスタッフも徐々に地元住民にバトンタッチし、オープン当初は地元とは無関係だった運営スタッフも今では全員が地元育ちか地元に移住した人間だ。長く働ける環境が整い、スタッフの子どもたちがアルバイトをするような二世代で働く光景もそう遠くないだろう。
地元スタッフによる地域密着型の運営に加え、さらなる集客を生み出しているのが、スポーツでの地元活性化を目指す『社団法人鋸南クロススポーツクラブ』との相乗効果だ。
社団法人鋸南クロススポーツクラブは、R.project代表と鋸南町の地元関係者が協力して立ち上げたスポーツ振興団体で、「サンセットブリーズ保田」を拠点に、スポーツ教室やマラソン大会など年4回の大型スポーツイベントを開催するほか、日本スポーツ振興センターの助成金を活用して公式サイズのサッカー場を建設するなどの活動を行っている。
今ではサンセットブリーズ保田の宿泊者数も増加し、合宿事業からスポーツ振興と町おこしを成功させたモデルとして各方面から注目を浴びている。

あたりまえの存在 そしてその先へ

当初、鋸南町全体の年間宿泊数は12,000泊だった。それが今や、サンセットブリーズ保田の年間宿泊数だけで23,000泊を達成している。
多くの若者の訪問に驚いていた地元の住民たちにも、今ではそれがあたりまえの光景として受け入れられつつある。
サンセットブリーズ保田に関わるすべての人にとって、地域にあたりまえの存在として浸透していくことの意義、そしてその存在価値をあたりまえに提供し続けることへの誇りは忘れられないものとなるだろう。


今後は外国人観光客の誘致にも力を入れていくR.project。
鋸南町には日本の自然や食など、独特の文化を体験したいという外国人観光客のニーズを満たせる魅力がたくさんある。
そう遠くない未来で、まだまだ知られていない鋸南町の魅力が世界中に発信されるだろう。


この先、サンセットブリーズ保田が10年目、20年目を迎える頃には、どんな「あたりまえ」の光景が広がっているのか。
自分たち、地元住民、そして鋸南町の底力に期待し、常に面白がる。これからも未活用資源の価値を最大限に引き出すビジネスの拡大に取り組んでいく。
サンセットブリーズ保田は、そんなR.projectのDNAを象徴する永遠に続くプロジェクトなのだ。

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